ショーは続けなければならない

The show must go on

Inside my heart is breaking

My make-up may be flaking

But my smile still stays on.

クドクドと、組織のミッションと事業のミッションは違うやら、組織のミッションはふわっとしたものがいいやらと、好き勝手申し上げてきたけれど、正直かなり後付けの議論だとは思う。

事業を立ち上げたばかりの起業家は目の前の事業に集中し、成功するのに必死だ。「上場後、事業に密結合したミッションが齎す弊害が云々」なんて聞かされても全くもってリアリティーがない。「ミッションがどうたら」なんて七面倒くさい事言われたって、「うっせーバーカ!」と一蹴されるのが関の山だろう。そりゃそうだよな。

けれどもひとたび走り始めたら、ショーは続けなければならない。既に固定化したミッションが掲げられている組織の場合、どのように既存のミッションを取り扱うべきなのだろうか?特に既存のミッションが強烈な存在感を発揮している場合、事はややこしくなってくる。カリスマ性や強烈なビジョンは両刃の剣だ。上手く回っている時はいいが、停滞感が漂い始めると、そうした価値観自体が存続の上での障壁になりかねない。

この点、僕なりに考える妥当な案は、既にあるミッションの意味合いを微妙にずらしていくことだ。元々あるフレーズや表現は活用したまま、徐々にその内容を拡大解釈して、新たな事業領域にも転用可能なものに意味合いを書き換えていく。

本来的にはドラスティックに文言自体を変えてしまい、賞味期限が切れた事業の風味は消し去った上で、既述したような要件を満たす文言を掲げることができればそれに越したことはない。けれども、それではあまりにも取ってつけた感が出てしまう。腹落ち感がない。会社が丸ごと買収されてしまうような大掛かりなイベントでも演出しない限り、実現可能性が極端に低い。

次善の策とはいえ、組織を回していく上では解釈論で納まりをつけるしかないのだろう。

関連して、こうしたミッションの解釈論や、全体的な方向感を定着させる上でのお決まりのtipsを少々。

まずは同じことを何度も言い続けること。できればフレーズも統一して、人に話す際には決まり文句のように同じことを何度も何度も言い続けるのがいい。

簡単に見えて、実はなかなか難しい。まずもって言っている本人が飽きてしまう。オウムみたくひたすら同じフレーズを繰り返していたら、時にはもう少し気の利いたことを言いたい誘惑にも駆られもするし、「毎度毎度同じこと言い続けて、俺ってばアホに見えてないかしら」なんて思ったりもする。

けれども大丈夫。他の人は自分の話なんかこれっぽっちも聞いちゃいない。我が身を振り返って、朝礼で校長先生が話していた内容なんて聞いていたためしがあっただろうか?だから余計な心配はせずにオウムになった気持ちで同じ内容を何度も繰り返せばいい。どれだけ聞いていない相手でも、同じことをひたすら聞かされ続ければ、多少は定着するようにもなる。話し始めた途端、相手が「どうせまたこう言うんでしょ」とウンザリしてくれるようになればしめたものだ。

次に対外発信。メディアを介してでも何でもいい。とにかく外部に向かって発信すること。中の人は中で話された内容なんて信じやしないけど、なぜか同内容でも新聞やらメディアに掲載された途端、無条件に信じだすものらしい。発信している側は、話した内容がどう切り取られて編集されているのかをつぶさに見ているわけで、こうしたメディアを介した情報が如何にいい加減なものか、痛感しているわけだけれども。メディアでも決算発表でもブログでもいいのだけど、とにかく外部に向かって発信し続けること。

最後に言行を一致させること。随分と正攻法ではあるのだけれども、語ったミッション内容に即して実際の施策を講じ、またそうした施策の一つ一つが全体の方向感とどのように一致しているのか、文脈を説明すること。単に大上段の「ミッション」や「戦略」を掲げても仕方がない。それらに連動した具体的なアクションがあってこそ、こうした言葉が意味を持ち出す。その上で、そうしたアクションをちゃんとお題目と紐付けて愚直に説明することだ。「ほら、言ってたこと本当にやったでしょ?」と見せること。

組織を運営していく過程では、当然ながら異なる意見を持つ人も多数現れる。そうした人達を説得しきるのは望むべくもない。けれどもできることであれば、「こいつの言っていることは全く気に入らないけれども、こいつはやると言ったことは本当にやる」という点においては、抵抗勢力からも信頼されるようになりたい。相手から見て自分の行動の予測が可能になり、ブラフではなくて本当にやると意識づけることができれば、何かとやり易くなる。

さて、「ミッション」についてああだこうだと述べてきたのだけれど、「ミッション」と共によく挙げられる概念として「バリュー」というものがある。カタカナ英語的には「お得なセットかしら?」と思ってしまう響きの言葉ではあるのだけれども、これについて、僕は「ミッション」を実現する上で組織が重視する価値観や行動規範、基本動作のようなものだと解釈している。いわば組織の「ノリ」を言語化したものだ。

組織の持続性を考える上では、「その組織が何をするために存在するのか」を定めるミッションよりも、「その組織の行動原理、ノリはどんなものか」を表すバリューの方が実はよほど重要なんじゃないかと思っている。

この点、リクルート社に伝わる言葉の数々にはまさに天才的なセンスを感じる。江副氏という稀代のアントレプレナーへの興味は尽きないし、一緒に働いていらした方々にはなるべく彼の話を聞くようにしている。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」なんてフレーズは、日本中の遍く会社が採用すべきなんじゃないだろうか。

 
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