菊と刀とスタートアップ
「組織への執着」と並んでもう一つ、なんとなく日本企業にありがちやな~と感じるのが「日本発」に対する拘り。
これもまた、清く正しく「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を守り続けるエスタブリッシュメントの専売特許ではない。スタートアップ創業者の口からも、「世界に向けて誇れる日本発の企業」といったフレーズを耳にすることがままある。
なんとなく、『官僚たちの夏』なノリが漂う。
強烈なブランドがあり、産地の提示が高品質を保証するシグナルとして機能し得るのであれば、地域性を強調するのは有効な手段なのだろう。
国産牛なら「松坂牛」を食べたいと思うものだし、「ドイツ車」と聞けば脊髄反射で「頑丈なんやろな」と想像する。本当かどうかは知らない。
“Designed by Apple in California"もなんとなくクリエイティブな香りがする。
逆に、地域のブランド化を企図しているのであれば、これもまた理解できる。
世界に羽ばたけ鯖江のメガネ。アニメKawaii!クールジャパン。えとせとらえとせとら。。。
ただ、「日本発の」と口にするとき、そのフレーズにはマーケティング上の要請以上の何かが込められているように感じる。日本製品に対する信頼感云々といった話とはちょっと違う。地域性というよりは、国家や国民性にスポットライトが当っており、なおかつ問答無用でそれを是とするような空気感だ。
本来、顧客が求めているのは優れた製品や優れたサービスであって、それがアメリカ製であろうが中国製であろうが日本製であろうが関係ない。地域の名前が製品・サービスの訴求に寄与するのであれば提示すればいいし、ネガティブに働くのであれば出さなければいい。
そもそも、これだけ地域を跨いだ国際分業が進んでしまえば、「XX発」という主張はあまり意味をなさなくなってくるし、それ以上に、国民国家の境目を自由自在に飛び越え得る点が、会社という枠組の面白さだとも思う。
オリンピック代表でもないのだし、殊更「日本」を強調する必要は感じないのだけど、どうなんやろね。なんとなくお約束として言わなくちゃいけない感。
あくまで個々人の趣味の問題だから、良し悪しを述べるつもりはないんだけど。
まぁメディア受けはしやすいのだろうし、そういう考えが好きな向きからは支援を得やすいという実利もあるのだろう。存外、当事者たちはしたたかに発言してんのやろね。
似たようにありがちな話で、情報通信業に関わる開発者がなぜか「ものづくり」という表現を好き好むというのも個人的には大変興味深いのだけれど、それはまた別のお話。